なぜ二度寝は良くない?メリット・デメリットや原因、しない方法を解説
朝のアラームが鳴った瞬間、「あと5分だけ…」と思ってしまう二度寝の誘惑。多くの人が経験するこの習慣は、一時的な心地よさをもたらす一方で、実は私たちの体と心に様々な悪影響を与えている可能性があります。
二度寝は単なる「甘え」や「だらしなさ」の問題ではありません。睡眠リズムの乱れ、体内時計の混乱、さらには日中のパフォーマンス低下など、科学的に証明された弊害が数多く存在します。しかし一方で、疲労回復や精神的な安らぎといったメリットがあることも事実です。
なぜ私たちは二度寝をしてしまうのでしょうか?その背景には睡眠不足、ストレス、生活習慣の乱れなど、現代人特有の問題が潜んでいます。また、二度寝をやめたいと思っても、なかなか実行できない理由もあります。
この記事では、二度寝がもたらすメリットとデメリットを科学的根拠に基づいて詳しく解説し、二度寝をしてしまう原因から効果的な改善方法まで、すっきりとした朝を迎えるための実践的なアドバイスをお届けします。質の高い睡眠と規則正しい起床習慣を身につけて、より充実した一日のスタートを切りましょう。
二度寝が良くないと言われる理由は?4つのデメリット

二度寝が良くないと言われる主な理由は、睡眠の質を低下させ、日中のパフォーマンスに悪影響を及ぼすためです。特に以下の4つのデメリットが挙げられます。
体内時計(サーカディアンリズム)が乱れる
私たちの体には約24時間周期で働く体内時計が備わっており、この生体リズムをサーカディアンリズムと呼びます。体内時計は起床時刻、就寝時刻、体温変化、ホルモン分泌など、生命活動のあらゆる側面をコントロールしています。
二度寝をすることで毎日の起床時刻が不規則になると、この精密な体内時計が混乱してしまいます。特に朝の光を浴びるタイミングがずれることで、メラトニンの分泌リズムが狂い、夜になっても自然な眠気が訪れにくくなります。
その結果、夜の就寝時刻も後ろ倒しになり、翌朝また起きられないという悪循環に陥ってしまうのです。体内時計の乱れは単に睡眠の質だけでなく、消化機能や免疫機能にも悪影響を与えるため、規則正しい起床習慣が重要とされています。
かえって強い眠気とだるさ(睡眠慣性)を引き起こす
二度寝をすることで、かえって目覚めが悪くなる現象を「睡眠慣性」と呼びます。これは脳が完全に覚醒状態に移行できていないために起こる生理現象です。アラームで一度目覚めた後に再び眠ると、短時間であっても深い睡眠段階(ノンレム睡眠)に入ってしまうことがあります。
この深い眠りの最中に再び目覚めると、脳の認知機能や判断力が大幅に低下し、頭がぼんやりとした状態が長時間続きます。睡眠慣性は通常15分から30分程度で解消されますが、重度の場合は2時間以上も影響が続くことがあります。
二度寝をしない場合と比較して、二度寝後の方が疲労感や眠気が強くなるのは、この睡眠慣性が原因です。結果として、午前中の作業効率が著しく低下し、一日のスタートが台無しになってしまいます。

自律神経のバランスを崩し、ストレスを増やす
自律神経は交感神経と副交感神経から構成され、私たちの意識とは無関係に心拍数、血圧、消化機能などをコントロールしています。正常な起床時には交感神経が優位になり、体が活動モードに切り替わりますが、二度寝をすることでこの切り替えが不完全になってしまいます。
不規則な起床により自律神経の調整機能が乱れると、日中でも副交感神経が過度に働き、だるさや集中力の低下を招きます。
また、起床時刻が安定しないことで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌パターンも乱れ、慢性的なストレス状態が続くようになります。このストレス状態は免疫機能の低下、消化不良、頭痛、肩こりなどの身体症状として現れることも多く、心身の健康に悪影響を与えます。規則正しい起床習慣は自律神経のバランスを整え、ストレス耐性を高める重要な要素なのです。
貴重な朝の時間を失い、焦りを生む
朝の時間は一日の中で最も集中力が高く、創造性に富んだ「ゴールデンタイム」とされています。二度寝によってこの貴重な時間を失うことで、その日の予定や目標に対する準備時間が不足し、慌ただしい一日のスタートを切ることになります。時間に追われることで生まれる焦りや不安は、精神的ストレスとなり、その日一日のパフォーマンスに悪影響を与えます。
また、朝食を抜いたり、身だしなみを整える時間が不足したりすることで、健康面や社会生活にも支障をきたします。さらに、「また二度寝してしまった」という自己嫌悪や罪悪感は、自尊心の低下につながり、長期的には自信喪失やうつ状態の原因となることもあります。
朝の時間を有効活用することで得られる達成感や充実感を失うことは、生活の質(QOL)の低下に直結するため、規則正しい起床習慣の確立が重要です。
二度寝の効果とは?4つのメリット

二度寝は一般的にデメリットが多いとされますが、状況によってはメリットがあるとされる見方もあります。ただし、これらのメリットは限定的であり、効果的な方法で行うことや、個人の体質、状況に大きく左右される点に注意が必要です。
二度寝のメリットとして挙げられる4つのポイントは以下の通りです。
ストレスを緩和させて幸福感を向上させる
二度寝には心理的なストレス軽減効果があります。アラームで無理やり起こされた状態から再び眠りに入ることで、脳内では「セロトニン」や「エンドルフィン」といった幸福ホルモンの分泌が促進されます。
これらの神経伝達物質は自然な鎮静作用を持ち、前日の疲れやストレスを和らげる効果があります。特に、睡眠不足が続いている場合や精神的な負担が大きい時期には、二度寝によって得られる安らぎが心の回復に重要な役割を果たします。
また、「まだ眠っていても大丈夫」という安心感そのものが、日常生活のプレッシャーから一時的に解放される感覚を生み出し、精神的な余裕を取り戻すきっかけになることもあります。短期的には、この心理的な安定効果により、その後の活動に対する意欲や集中力が向上する場合があります。
記憶を整理して定着させる
睡眠中、特にレム睡眠段階では、脳が前日に獲得した情報を整理し、長期記憶として定着させる重要な処理が行われています。二度寝で得られる追加の睡眠時間は、この記憶の統合プロセスをより完全に行う機会を提供します。
学習した内容の復習や重要な情報の記憶定着において、この追加の睡眠は有益な効果をもたらすことがあります。特に、前日に新しいスキルを学んだり、複雑な問題に取り組んだりした場合、二度寝中の脳内では神経回路の再編成が進み、記憶の定着が促進されます。
また、睡眠中には不要な情報の除去も行われるため、重要な記憶がより明確になり、後の学習や問題解決能力の向上につながることもあります。ただし、これらの効果を得るためには、質の良い睡眠環境と適切な睡眠時間が前提となります。

創造性(クリエイティビティ)を向上させる
二度寝中の特殊な睡眠状態は、創造性の向上に寄与することがあります。この時間帯では、論理的思考を司る左脳の活動が抑制される一方で、直感的で創造的な思考を担う右脳の活動が活発になります。
レム睡眠とノンレム睡眠の境界領域で起こる独特な意識状態では、普段は結びつかないような異なる記憶や概念が結合し、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。多くの芸術家や科学者が、朝の眠気の中でインスピレーションを得たという報告があるのは、この現象によるものです。
また、二度寝中の夢の内容も創造性に影響を与えることがあり、夢で見た映像やストーリーがクリエイティブな作品のヒントになることもあります。ただし、この効果を最大限に活用するためには、起床後すぐにアイデアを記録することが重要です。
免疫機能のサポートになる
睡眠不足が続いている状態では、免疫システムの機能が低下し、感染症にかかりやすくなったり、疲労回復が遅れたりします。二度寝によって得られる追加の睡眠時間は、免疫細胞の活性化と修復プロセスをサポートする効果があります。
睡眠中には、白血球の一種であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性が高まり、ウイルスや細菌に対する抵抗力が向上します。
また、成長ホルモンの分泌も促進され、組織の修復や再生が活発に行われます。特に、風邪の引き始めや体調不良を感じている時の二度寝は、身体の自然治癒力を高める効果があります。さらに、睡眠中には抗炎症作用のあるサイトカインの産生が増加し、慢性的な炎症を抑制する働きも期待できます。
ただし、これらの効果は適度な睡眠時間内でのみ有効であり、過度な睡眠は逆に免疫機能の低下を招く可能性があります。
二度寝してしまうのはなぜ?5つの原因

二度寝をしてしまう原因は、主に以下の5つが考えられます。
これらの原因が単独で、または複合的に作用することで、二度寝をしてしまうと考えられます。二度寝を改善するためには、これらの原因を一つずつ見直し、改善していくことが大切です。
睡眠時間が不足している
現代人の多くが抱える最も根本的な問題が睡眠時間の不足です。理想的な睡眠時間は個人差がありますが、成人では一般的に7~8時間とされています。しかし、仕事や家事、スマートフォンの使用などで就寝時刻が遅くなり、十分な睡眠時間を確保できていない人が増えています。
睡眠不足の状態では、脳と身体の疲労が完全に回復しないため、朝になっても「まだ眠りたい」という強い欲求が生まれます。この状態でアラームが鳴っても、身体は本能的により多くの睡眠を求めるため、二度寝への誘惑に抗うことが困難になります。
また、慢性的な睡眠不足は「睡眠負債」として蓄積され、週末の寝だめでは完全に解消されないため、平日の朝の起床がますます困難になる悪循環に陥ってしまいます。
睡眠の質が低下している
睡眠時間を確保していても、睡眠の質が悪ければ十分な休息を得ることができません。睡眠の質を低下させる要因には、寝室の温度や湿度の不適切さ、騒音や光の問題、寝具の不具合などの環境要因があります。
また、就寝前のカフェイン摂取、アルコールの飲用、スマートフォンやテレビの視聴による脳の覚醒状態の持続も睡眠の質を大きく損ないます。さらに、ストレスや不安、身体的な不調により、夜中に何度も目が覚めたり、浅い睡眠が続いたりすることで、朝になっても疲労感が残ります。
質の悪い睡眠では、深い睡眠段階であるノンレム睡眠が十分に得られないため、脳の疲労回復が不完全となり、朝起きても「まだ眠い」と感じて二度寝をしてしまうのです。
血圧が低い
血圧が低い人(低血圧症)は、朝の起床時に特有の困難を抱えています。睡眠中は血圧が自然に低下しますが、起床時には交感神経の働きによって血圧が上昇し、身体が活動モードに切り替わります。
しかし、もともと血圧が低い人では、この朝の血圧上昇が不十分で、脳への血流量が少ない状態が続きます。その結果、起床時にめまいやふらつき、強い眠気を感じやすくなり、ベッドから出ることが困難になります。
また、低血圧の人は自律神経の調節機能が不安定で、朝の覚醒に必要な神経系の切り替えがスムーズに行われないため、自然と横になっていたいという欲求が強くなります。このような身体的な特徴により、意志の力だけでは起床が困難で、結果として二度寝を繰り返してしまうことになります。
朝のモチベーションが低い
心理的な要因も二度寝の大きな原因となります。その日にやるべきことが明確でない、仕事や学校に対してやる気が起きない、人間関係にストレスを感じているなど、朝起きる理由や目標が見つからない状態では、ベッドから出る動機が薄くなります。
特に、前日に嫌なことがあった場合や、その日に苦手な予定が入っている場合には、現実逃避として二度寝を選択してしまいがちです。また、生活に変化や刺激が少なく、毎日が単調に感じられる場合も、朝起きることへの積極性が失われます。
逆に、楽しみな予定がある日や重要な約束がある日には、自然と早く起きられることが多いのは、モチベーションが起床行動に大きく影響するためです。精神的な充実感や生活への満足度が、朝の起床習慣と密接に関係しているのです。
習慣化してしまっている
人間の行動の多くは習慣によって支配されており、二度寝も例外ではありません。一度「アラームが鳴ったらスヌーズボタンを押す」という行動パターンが形成されると、意識的に考えることなく自動的にその行動を繰り返すようになります。
脳は効率性を重視するため、頻繁に行う行動を自動化して、思考の負担を軽減しようとします。そのため、二度寝の習慣が身についてしまうと、朝の眠い状態では理性的な判断よりも習慣的な行動が優先され、無意識のうちにスヌーズボタンに手が伸びてしまいます。
また、スマートフォンのアラーム機能では、簡単にスヌーズ設定ができるため、この習慣がより強化されやすい環境にあります。習慣は約21日から66日程度で形成されるとされており、一度定着した二度寝の習慣を変えるには、意識的な努力と新しい行動パターンの継続的な実践が必要になります。

二度寝をしないためにはどうすればいい?4つの対処法
以下のような対処法を組み合わせることで、二度寝の習慣を断ち切り、より快適な目覚めと質の高い日中を過ごせるようになるでしょう。
夜の睡眠時間を確保する
二度寝を防ぐ最も根本的で効果的な方法は、夜に十分な睡眠時間を確保することです。成人の理想的な睡眠時間は7~8時間とされており、この時間を確保することで朝の自然な目覚めが促されます。
まず、起床時刻から逆算して就寝時刻を決め、毎日同じ時間にベッドに入る習慣を作ることが重要です。就寝前の1~2時間はリラックスタイムとして、スマートフォンやテレビの使用を控え、読書や軽いストレッチ、瞑想などの落ち着いた活動に切り替えましょう。
また、カフェインやアルコールの摂取を夕方以降は避け、夕食は就寝の3時間前までに済ませることで、質の高い睡眠を得ることができます。室温を18~22度に調整し、遮光カーテンで光を遮断するなど、睡眠環境を整えることも大切です。十分な睡眠時間を確保することで、朝になると自然に覚醒し、二度寝の誘惑に打ち勝つことができるようになります。
朝日を浴びる
朝日を浴びることは、体内時計をリセットし、自然な覚醒を促す最も効果的な方法の一つです。太陽光に含まれる青色光は、眼球を通じて脳の視交叉上核に届き、体内時計を調整するシグナルとして働きます。この光の刺激により、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、覚醒ホルモンであるコルチゾールの分泌が促進されます。
起床後すぐにカーテンを開けて自然光を室内に取り込むか、可能であればベランダや窓際に出て直接朝日を浴びることが理想的です。曇りの日でも、屋外の明るさは室内の照明よりもはるかに強く、体内時計への影響は十分にあります。朝日を浴びることで、その日の夜には自然にメラトニンの分泌が始まり、規則正しい睡眠リズムが形成されます。
また、朝の光は気分を改善し、やる気を向上させる効果もあるため、一日を前向きにスタートできるようになります。
アラームを遠くに置く
アラームを手の届かない場所に置くことで、物理的に起き上がらざるを得ない状況を作り出します。ベッドサイドにスマートフォンを置いていると、眠い状態でも簡単にスヌーズボタンを押してしまい、二度寝の誘惑に負けてしまいます。
アラームを部屋の反対側や廊下に置くことで、音を止めるために必ず立ち上がる必要が生まれ、その行動によって身体が覚醒状態に移行しやすくなります。立ち上がることで血液循環が改善され、脳への酸素供給が増加し、自然と目が覚めてきます。また、一度立ち上がってしまえば、そのままベッドに戻るという選択肢が心理的に取りにくくなり、起床への意志が固まります。
アラーム音も、穏やかすぎず、うるさすぎない適度な音量に設定し、段階的に音量が上がる設定にすることで、より自然な目覚めを促すことができます。複数のアラームを異なる場所に設置することで、より確実に起床できる環境を整えることも効果的です。
朝に楽しみを作る
朝起きることに対する積極的な動機を作ることで、二度寝の誘惑を克服しやすくなります。好きな音楽を聴く、美味しいコーヒーを飲む、お気に入りの朝食を食べる、ペットと触れ合う、朝の散歩をするなど、自分にとって楽しみとなる活動を朝の時間に組み込みます。
これらの楽しみがあることで、「起きたくない」というネガティブな感情から「起きて楽しいことをしよう」というポジティブな感情に変わり、自然と起床への意欲が高まります。また、朝の時間を使って趣味の時間を作ったり、自己成長のための読書や勉強をしたりすることで、朝の時間に特別な価値を見出すことができます。
週末には特別な朝食を作る、新しいカフェに行く、朝のヨガクラスに参加するなど、変化に富んだ楽しみを計画することも効果的です。前日の夜に翌朝の楽しみを意識することで、期待感が高まり、自然と早起きしたくなる心理状態が作られます。このように朝の時間を充実させることで、二度寝よりも魅力的な選択肢を作り出すことができるのです。
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